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睡眠コラム

『新生活のはじまり。変化に強い心身をつくる快眠講座』 医学博士 千葉伸太郎先生の睡眠コラム


少しずつ日が長くあたたかくなり、草木が芽吹きはじめる春。新年度が春に始まる日本では、進学や就職、異動、引っ越しなど、社会生活においても、春は新しいスタートの季節です。

新生活における環境の変化やストレスに負けず、毎日をアクティブに過ごすためには、変化に強い身体をつくることが大切。そのために重要なのが、実は睡眠だということをご存知でしょうか?

今回は、睡眠研究の専門家である医学博士の千葉伸太郎先生に、心と身体のコンディションを整える“快眠の力”について伺いました。


変化の多い‘季節の変り目’は体調を崩しやすい?
あたたかく過ごしやすい気候を迎える一方、季節の変り目は気温の変化や、環境や生活リズムの変化に心身が追いつかず、体調を崩しやすくなる時期でもあります。

気温の変化
長い冬が終わり一気に暖かくなってくると、気温の変動に合わせて、私たちの身体にも変化が現れます。その代表が自律神経です。 冬の間、寒さに耐えるために活発に働いていた「交感神経」(=体を目覚めさせ、活動させる神経)が気温の上昇とともに身体をリラックス状態へ導き、「副交感神経」(=休息に働きかける神経)優位へとバランスが大きく変化することで気温の変化に対応しきれずに、眠気やだるさを感じやすくなるといわれています。

生活環境の変化
新しい職場や学校、住まいなど、新たな環境に身を置くと、意識している以上に緊張して、心身のエネルギーを使うもの。疲労・生活リズムの変化やストレスから、しっかり眠れない夜が続いている人も多いのです。知らず知らずのうちに睡眠が不足し、心身の疲れをリセットできないために、体調を崩してしまうケースも珍しくありません。


変化に強い身体をつくるために
新生活をアクティブに過ごすためには、こうした変化に強い身体をつくることが大切です。そのためには、身体の活動と休息のリズムを整え、睡眠の質を高めることが欠かせません。

快眠でストレスや疲れをリセット
睡眠中には、ストレスの源や疲労物質を取り去る働きのある「成長ホルモン」が分泌されます。この成長ホルモンは、深い「ノンレム睡眠」の最中に多く分泌されるため、睡眠の質を上げることがストレスや疲れに強い身体をつくることにつながります。中でも意識したいのが、眠り始めの90分の眠りを深めること。この90分は成長ホルモンが最も活発に分泌されます。この時間に深く眠ることができれば、一日の疲れをリセットしやすくなります。

快眠は折れない心を育てる
良質な睡眠をとると、感情を左右する脳の「扁桃体」がネガティブな情動刺激に反応しにくくなるといわれています。つまり、快眠は脳の“ポジティブシンキング回路”を強め、ストレス耐性を上げてくれるというわけです。さらに、深い眠りで脳がしっかり休息できれば、日中の情報整理がスムーズに行われ、目覚めた後の集中力や作業効率UPも望めます。

メンタル面でもフィジカル面でも、快眠は私たちを変化に強くしてくれるのです。



睡眠の質を高める習慣&睡眠環境とは
眠りの質には、日々の習慣や睡眠環境が大きな影響を及ぼします。新生活を迎えるこの時期こそ、毎日の習慣や睡眠環境を見直してみましょう。

朝起きたら太陽の光を浴びる
目覚めたら、まずカーテンを開けて太陽の光を十分に浴びましょう。朝日を浴びることにより、眠りを導くホルモン「メラトニン」の量が一気に減少し、脳がスリープモードから覚醒状態へと切り替わります。

交感神経を刺激して気温の変化に対応
気温が上昇する春は、自律神経のバランスが変化し、副交感神経が優位に傾きがち。日中の眠気やあくびが気になる時には、手足を動かして血流を良くすることで、活動力を高める交感神経の働きを活性化してくれるので、ぜひ試してみてください。

寝具はスムーズに寝返りしやすいものを
人は眠っている間に一晩で約20回もの寝返りを打ちます。寝返りは血液の循環を促して筋肉の硬直をほぐし、体全体の疲れを回避する役割を持っています。さらに、寝床の温度や湿度を調節して快適な環境を保ち、睡眠サイクルを整える役割もあるといわれています。眠りの質を上げるには、体を押し戻す反発力にすぐれ、寝返りのしやすい寝具を選びましょう。

快眠を叶える習慣リスト
その他、こんな習慣が眠りの質を高めてくれます。

□ 夜は強い光(パソコンやテレビ、携帯電話など)をさける(オレンジ光にするなど)
□ 眠る前のカフェインやアルコールの摂取を控える
□ 規則正しい食事のリズムと早めの夕食を心がける
□ 適度な運動習慣を持つ
□ 自分に合った入眠儀式(読書や音楽、アロマなど)を取り入れる
□ 就寝1〜2時間前に、体温より高めの熱すぎないお風呂に入る 

 

季節が変わり、新しい環境での刺激や緊張にさらされる時期こそ、睡眠の“質”を高めることが大切です。良質な睡眠をとり、心と体のコンディションを高めるサイクルが整えば、春やその先の息切れを防ぐことにつながります。変化の多い新生活の時期を、快眠の力で健やかに乗り切りましょう。 

千葉伸太郎先生
 
 
[プロフィール]
医師/医学博士 千葉伸太郎
(ちば・しんたろう)
1988年東京慈恵会医科大学卒業後、同大学耳鼻咽喉科学教室に入局。耳鼻咽喉科の専門医として、太田総合病院 睡眠障害センターにて長年にわたり睡眠医療の現場に立ち、多くの人々の“眠りの悩み”に向き合ってきた。太田総合病院記念研究所 太田睡眠科学センター所長、一般社団法人 良質睡眠研究機構(iSSS)常務理事、日本睡眠学会理事・事務局長。日本睡眠学会睡眠医療認定医。
 
2018.02.20